チープ・トリック『イン・アナザー・ワールド』幾つになってもビートルズ愛が止まらない[No.973]

チープ・トリックの新譜が出ると聞き,せっかくなのでアナログ盤を発注した。ところがコロナの影響か,なかなか品物が届かない。それどころか,商品が確保できず注文がキャンセルになる。そこで他の通販サイトに再発注。しばらくして商品発送の知らせがあるが,一向に届く気配がない。またダメか,とあきらめかけたところに遂に商品が到着。今年の春ごろに発売されたはずだが,結局届いたのはもう秋の初め。満を持してレコード針を乗せると出てきた音は…。

A面1曲目「Here comes the summer」というコーラス部分は中期ビートルズ風。2曲目はブンチャカいってる2拍子のこれまたビートルズお得意パターン。3曲目はまるで気だるいジョン・レノンのソロ風。まったくチープ・トリックの連中ときたら,幾つになってもビートルズ愛が止まらない。A面最後「So It Goes」はアコースティック・タッチの新機軸。かと思ううちに,後ろで鳴り始めたキーボードは「ストロベリーフィールズ・フォーエヴァー」風。いつのまにかビートルズ・ネタをさりげなく溶け込ませてくる。油断も隙もありゃしない。

アルバムの半分ほどの曲はいつものチープ・トリック・ハードロック・スタイル。ハードな曲とポップな曲のせめぎ合い。よくチープ・トリックはパワー・ポップと呼ばれる。確かにハード・タッチなのにメロディはポップという楽曲もある。しかし,徹底してハードな曲もやるし,かなりポップ度の高い曲もやる。両方やるところがチープ・トリックのバランスだ。

B面2曲目「パッシング・スルー」でも,中期ビートルズのインド趣味の影響が背後から立ち上ってくる。とにかく気が付けばビートルズだ。一方で「ヒアズ・ルッキング・アット・ユー」では,サビの背後に名曲「サレンダー」風のキーボードの音色が鳴っている。これは元をただせばザ・フー『フーズ・ネクスト』で多用されたキーボード・プレイへのオマージュである。2021年になってもチープ・トリックは,自らのルーツに忠実である。

B面ラスト,アルバムを締めるのはジョン・レノン「ギミー・サム・トゥルース」のカヴァー。徹底してビートルズ愛を表明するチープ・トリック。こうなるとむしろ潔い。アルバム・デビューから40数年経過してのニュー・アルバムは,聴いていて嬉しくなる,いつものチープ・トリックだった。
IN ANOTHER WORLD [VINYL] [Analog] - CHEAP TRICK
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